大会長挨拶
百日紅と夾竹桃は花の盛りを少し過ぎて、ふと見れば足元の草は蕾をつけ、かがんでみれば地面近くには涼しい風が吹いています。緩やかに秋へと移りつつありますこのごろ、皆様お健やかにお過ごしのことと存じます。
本年10月3日(土)、4日(日)の日本臨床催眠学会第26回大会が近づいてまいりました。テーマは「からだの痛み、こころの痛み」です。すばらしく医療が発達した現代でも、痛みの慢性化と難治化は大きな臨床的問題であり続けています。薬物療法だけでなく、運動療法、そして考え方や行動を修正する心理療法(認知行動療法;CBT)が多角的に併用され、さらにCBT以外の様々なアプローチにも目が向けられています。一方、臨床催眠は、歴史が長く、「痛みの軽減に大きな効果をもたらす可能性がある」にもかかわらず、「催眠」に対する患者の偏見があり、実践する臨床家が少なすぎると指摘されています(慢性疼痛診療ガイドライン,2021)。更に、何故、「臨床催眠」が痛みを変化させうるのかという議論が臨床家の中でほとんど出来ていません。
適切な鎮痛がえられないことは、患者の日常生活を妨げ、医療者も苦悩します。よく誤解されるように、催眠は“鎮痛を生じる直接的で特別な手段”ではありません。鎮痛は様々な治療状況で生じます。臨床催眠での鎮痛の特徴は、クライエント自身が焦点化した意識状態に入り、その中でクライエント自身の潜在能力と反応を治療目的に沿って発揮できるよう援助することにより、自己催眠が習得され、損なわれていた本人の持つ“鎮痛反応”が再獲得され、促進されることです。
今回の大会は、多くの臨床家のご参加により、臨床催眠がからだの痛みとこころの痛みに対してどのような意味を持ち、またその治療に寄与できるのか、ということについて、共に考え、積極的に実践するきっかけにしていただきたいと思います。研究発表では鎮痛にかかわる症例だけでなく、より一般的な視点から催眠の基礎に迫る内容も聞いていただけます。更なる臨床実践と研究の輪を広げる機会になることを願っております。
プレコングレスビデオは、5名の臨床催眠の実践家・活用者による、こころの痛みやからだの痛みのケアにおける臨床催眠の活用や催眠の本質についてのオンデマンド講義となっております。
10月3日(日)の技法研修会は催眠誘導の基礎を学ぶ初級と、痛みのペインマネージメントについて学ぶ中級の2コースがございます。
10月4日の学術大会では、大会長講演のあと、二つの大変貴重な講演を予定しております。
笹良 剛史先生をお迎えしての招待講演では、慢性疼痛と緩和ケアにおける奥深い痛みの世界と、そこでの全人的ケアと対話そして支援者の苦悩についてお話を伺います。教育講演では、安達 友紀先生に慢性疼痛に対する催眠の厳密で難解な研究を学ぶための良き道案内をお願いしております。
学術大会と技法研修会は事前登録のみで、申込締め切りが9月18日までとなっております。会場は新幹線名古屋駅からも大変近いウィンク愛知です。10月には急に高くなった青空にむかって、木々の枝ものびのびと枝を広げていることでしょう。からだの痛み、こころの痛みの治療に携わる臨床家の皆様、また、からだの痛みとこころの痛みを持つクライエントに寄り添われ、自らも痛みを持つことの多い臨床家の皆様と経験を分かち合うことができますよう、名古屋でお待ちしております。