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折り畳まれた青い紙

動画E

複雑性トラウマと催眠

大谷洋一(総合心療センター ひなが)

​公認心理師、臨床心理士

 2018年にICD-11が公表され、複雑性PTSDが独立した診断として規定されました。これにより杉山(2019)が述べている通り、この問題に「いよいよ医療や心理の専門家が正面から対応しなければならなくなった」のですが、それに加えて2024年度の診療報酬改定ではトラウマを対象とした心理支援加算が新設され、とりわけ医療の公認心理師は待ったなしの状況となりました。それもあってか持続エクスポージャー療法やEMDRをはじめとした「トラウマ記憶の処理」を目指すトラウマ焦点化療法の研修はどれも活況のようです。しかし、Gold(2020)が「複雑性トラウマを抱えたクライエントにトラウマの処理を行うと、場合によってはサバイバーが安定化の期間を経ずに時期尚早に暴露療法へと導かれると、フラッシュバックや解離などの有害な反応が生じうる」と述べているように、安易なトラウマ処理はクライエントを傷つける結果になり得ます。
 

 彼によると、複雑性トラウマを抱えたクライエントは単にトラウマを抱えているというだけでなく、成育過程で得られるべき体験やスキルを獲得する機会に恵まれないことが往々にしてあります。具体的には①構造とルーティン、②対人関係スキルの未発達、③判断力と推論の歪み、④感情調節と衝動コントロール、⑤注意・集中の維持などです。そして「トラウマ記憶の処理」ではこうしたスキルは身につきません。安定化の段階でこれらにアプローチすることが安全で有用であり、そして催眠はそのために用いることができます。Gold & Quiñones(2020)は「他者催眠によって育まれる対人的なラポールは、社会的機能を高めるために活用することができ、複雑性トラウマのサバイバーが著しく改善された対人関係を確立し、維持するための備えとなる。感情的な反応をより良く調節し管理する能力は、解離反応と催眠が共通して有する自動性を引き出すことを学ぶことによって強化される」と述べています。演者もこのことに賛成しますが、催眠の適用にあたってトラウマ的な関係性の再演とならないよう十分な配慮が必要であり、その配慮が同時に治療的でもあると考えています(大谷, 2019, 2024a,2024b)。複雑性トラウマを抱えたクライエントの中には、自分の意見や好みを無視され、他者の意見や好みを自分のものとして感じることを強いられてきた人がいます。そのクライエントに「あなたは深くリラックスします。安心を感じます」と「暗示で誘導する」ことは果たして治療的と言えるでしょうか。また、親の期待に沿えないと叱責されたクライエントに対し、「腕はどのように動くでしょうねえ」とあいまいな暗示を与えることは安全な誘導でしょうか。クライエントの生きてきた文脈に配慮しながら誘導を整えたいものです。この研修では演者のこれまでの演者の研究発表をまとめ、演者が複雑性トラウマを抱えたクライエントにどのように催眠を適用しているかについてお話しします。

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