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折り畳まれた青い紙

動画C

催眠が身体志向心理療法にもたらすもの

牧野  有可里(ソマティック・アプローチ・ジャパン)
 

博士(心理学),  臨床心理士
Somatic Experiencing®(SE)プラクティショナー,  認定EMDR

 慢性疼痛も、トラウマも、しばしば「ことばにならないまま、からだに残された」経験です。痛みは過ぎ去った出来事そのものではなく、いまも続く神経系の反応であり、こころの痛みとからだの痛みは、その根のところで分かちがたく結びついています。

 私はソマティック・エクスペリエンシング(SE)のプラクティショナー、EMDR療法家であり、日々の臨床では身体志向心理療法を実践しています。私がセッションで意図するのは、クライエントを催眠に導くことではありません。クライエントが、自分のこころとからだでいま何を体験しているのかに気づいていくこと——これからの人生の栄養となるような、身体感覚を伴うあたたかな体験を育てること、そして過去のトラウマに伴う強烈な恐怖をやわらかく癒していくこと——を支えることです。

 

 それでも私は、セラピーの基礎として、かつて催眠を真剣に学びました。そして催眠が私に教えてくれたのは、誘導の技法ではありませんでした。それは、微細な感覚に、立ちのぼるバイブレーションの波にどう触れるかという、チューニングの感覚。そして、いかにその場に深く存在できるかということ——つまり、セラピストの「在り方」そのもの、プレゼンスでした。

 

 クライエントのからだに、ことばにならない震えやかすかな動き、熱や流れが生まれるとき、それらを見逃さず、ただ、ともにある。セラピストがその波長に静かにチューニングし、安全な存在として「いま、ここ」に居つづけること——それ自体が、神経系の調整をたすけ、安全感の回復を支える力になることを、私は今もなお、学び続けています。これは、知的な作業ではありません。身体志向心理療法が大切にしてきた「気づき」や「内受容感覚」と、深いところで響き合う体験そのものです。

 

 本講演では、催眠を学んでこられた方々に向けて、催眠を学ぶことの意義をあらためて分かち合いたいと思います。催眠の実践者ではない私の身体志向の臨床にも、催眠を学んで育まれたプレゼンスは確かに息づいており、それが日々の臨床に何をもたらしているのかを、具体的な手ざわりとともにお話しします。クライエントを催眠に導かなくても、催眠から受け取ったまなざしは、痛みとの関わり方を、より繊細で、その人のペースに添ったものへと変えてくれます。からだの痛み、こころの痛みに向き合うすべての臨床家にとって、催眠を学ぶことが新たなまなざしを開くものであると、あらためて実感していただける時間になればと思います。

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